一昔前の話である。



「精が付きますから」そう言って勧められたのが海亀の卵。



知人が7~8個お土産として持って来て「精が付き過ぎるので1日1個までで」と言う。









最初はあまり気乗りがしなかったが、興味本位で一つ食べてみる。すると、海亀の卵は淡白な味わいで、鶏卵に慣れた舌では少しもの足りなさを感じた。



ただ食感が面白く、海亀の卵は火を通してもトロトロと柔らかくて、緩めの杏仁豆腐のようだ。





土産を持って来た知人は生食が好みだそうで、殻に穴を開けて中から吸い出すのがうまい食べ方なのだとか。。。。







乱獲により個体数が減少して世界的に保護されるようになった今では、海亀の卵を海産物として食べることに違和感を覚える。



しかし数十年前の日本において、海亀の産卵地域では普通に採取されて食べられてきた。産卵地では鶏卵よりも安価な卵という感覚で食べられており、腹を空かせた子供のおやつ代わりにもなっていた。





海亀の産卵地から程遠い都市部では、ややゲテモノ的な扱い受けており、普通の食品というよりは精力剤としての位置づけであった。





今は採取が禁じられて幻の食材となってしまった海亀の卵だが、割と簡単に購入できる国もあり、現地人によってお忍びで採取された卵が市場に出回っているケースがある。そして卵の他に肉や甲羅が高値で取引されるため、密漁は後を絶たない。





他国でもそうだが、鶏卵が広く流通している現代において海亀の卵の需要は一般的な食品としてではなく、精力剤としての意味合いが強い。



貴重な海亀の卵であるが現代の日本でもお金さえ払えば食べることができるそうで、珍味・精力剤として数個で数万円という高値で取引されている。