とある大型スーパーの青果コーナーではリンゴが山積みされている。





そこに毎日のように通って来ては、数十分間は張り付く初老の男性客が居た。






その客は一個一個リンゴを手に取って、鼻に押しつけ気味にクンクンと匂いを嗅いでいる。







乱れた白髪のその男性客、匂いを嗅ぐ眼差しは妙に真剣で、いつも険しい顔つきでクンクンとリンゴの匂いをただ嗅いでいるのだ。







沢山あるリンゴを匂いで品定めしているのかと思いきや、その客はリンゴは買わずに帰って行く。







正直な話、鼻を押しつけ気味にクンクンやられては気持が悪いので店側は迷惑していたが、商品に傷を付けている訳ではないので、その男性客に注意をすることができずにいた。







ある日、「老人がリンゴを舐めている」というお客さんからの苦情が入る。





店側はすぐにあの男性客だと感付いて、私服の従業員をリンゴ売り場の近くに配備して、ぺろりとやる現場を掴むことにした。










平日の午前中にその客は現れるのでしばらく待っていると、案の定険しい顔つきで店の中に入って来た。









男性客はしばらく日用品コーナーを見て回り、そして、いよいよリンゴ売り場の前へとやって来た。









私服姿の従業員が買い物客を装って、男性客の様子を覗っていると、一個一個リンゴを手に取っては口元に持って来るいつも行為を始めた。









私服の従業員は、舐めてるところを見つけたら事務所に連れて行く算段であった。











従業員はこっそりと近づくと、男がぼそぼそと独り言を言っているのが聞こえた。







うまく聞き取れなかったので、従業員は男性客の真後ろに身を置いて囁きに聞き耳を立てた。










「食ったやつ死ね、食ったやつ死ね、みんな死ねみんな死ね・・・」

息継ぎもほとんどなしに呪いの言葉をリンゴに浴びせかけていた。











従業員はぞっとして息を飲むと、男性客は感付いたのか乱暴にリンゴを売り場に戻すと、従業員の方を睨みつけて足早に去って行った。。。。









その日から男性客がスーパーに姿を現すことは無かったが、毎日数十分間、リンゴに呪いをかける歪んだ精神に従業員達はゾッとしたのだった。